桃園の真実
情報提供者:無問題サン


 劉備・関羽・張飛の三人は知り合ってから、よく集まって飲み食いをしていた。
 当時、張飛が一番豊かで、売っているものも肉であったから、張飛が招待する事が多かった。関羽も食糧を売っていたので金銭に困ることはなく、酒はいつも関羽が持参していた。ところが劉備はわらじを売っていてもうけも少なく、生活に苦労するほどだった。だからいつもただ飢えた口だけを持参して宴会にやってきていた。
 関羽と張飛は劉備がいつもただ食いばかりしているので、だんだんと面白くなくなり二人で相談して、この厄介者を追い払う策を考えた。

 ある日、二人はわざと上座にむしろを敷いて席を空けておいた。酒と料理がちょうど調えられたところへ劉備が一足のわらじをさげてやってきた。劉備はまったく遠慮の色もなく
「早く来るより、ぴったりがいい。弟たちお二人のご好意に背きませんぞ」
というなり、空いている席に腰をおろした。

 実はその席の下は井戸になっていて、劉備はその井戸に落ちてしまうはずであった。ところが劉備は腰を据えたまま、いつものように飲み食いしている。張飛はしばらくはびっくりしているだけであったが、やがて自分の席を離れるとこっそり劉備のうしろに廻りそっとむしろの端をもちあげた。すると井戸の中に雲がたなびき、鱗を輝かせた金色の龍が五本の爪で劉備を支えているではないか。驚いた張飛は、自分の席につくと関羽にこのことを耳打ちした。

 関羽はそこで悟った。今でこそ落ちぶれているが、将来は劉備はきっと大物だと。この劉備についていけば自分も人の上に立っていけるようになるに違いない。
「劉兄貴、この前我々が街で契りを交わしたやり方はお粗末過ぎたのではないかな?丁度今、三弟の家にいてお供えの品もそろっている。ひとつ改めて天地を祭って、正式に義兄弟の誓いをしようではないか」
 劉備はこんな裕福な友達と誓い合って、これからもいつもご馳走になれるのかと思ってすぐさま承知した。張飛もすぐ関羽の気持ちがわかったので
「関兄貴の言うのはもっともだ。改めて生死をともにし、いつまでも心変わりしないことを天に誓おうではないか」
と賛成した。
 そこで三人は桃園の誓いをかわしたのであった。


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