猛虎陥落


 ついに呂布は縄に縛られた状態で曹操の前に姿を現した。呂布はいきなり
「きつくてかなわん。ゆるめてくれ」
 と頼んだが、曹操は
「虎を縛るのだから、きつくしないわけにはいくまい」
 と言った。以下正史上でのやり取り
呂「随分痩せましたね」
曹「どうしてそんな事が分かるのか?」
呂「昔、洛陽でお会いした事があります」
曹「そうか忘れておった。痩せたのはお前をなかなか捕らえられなかったせいだ」
呂「殿にとって気がかりといえば、私以外にはないはず。その私がこうして降伏したのですから、天下に心配の種はなくなったというもの。殿が歩兵を率い、私に騎兵を率いさせれば、天下はもう平定できた様なものです」
 呂布はこの後劉備に向かって
「玄徳よ、君は客の身分。私は捕虜の身。縄を緩めてくれるように、口をきいてくれんか?」
 と嘆願した。曹操は笑いながら
「どうして直接言わないで、あちらに訴えるのか?」
 と言って、助命に傾き、縄を緩めるように命じた。しかし文書係だった王必が
「呂布は恐ろしい奴です。彼の軍勢もまだ周囲に残っています。緩めてはなりません」
 と言った。曹操はこの言葉で思い直し、さらに劉備が
「殿はこの男がかつて丁原に仕え、董卓に仕えたのをお忘れか?」
 と訴え、ついに斬首を決意した。呂布は劉備を指差し
「こいつこそ、一番信用ならん男だぞ」
 と言ったという。こうして呂布は絞首刑になった。

 呂布の首は陳宮・高順の首と共に晒し首になったあと許都に送られ、その後埋葬された。こうして時代に翻弄され、時代を翻弄した希代の猛将・呂布奉先の短い生涯は幕を閉じた。時代に『もしも…』は厳禁だが、もしも呂布が生きていたら…と考えると、ワクワクするのは私だけではないはずだ。そういう不思議な魅力の持ち主であった事に変わりはないだろうが、人間的に欠落した部分が多かった事は否めない。最後に呂布について語った陳寿の言葉で締めよう。

呂布について私はこう評価する。
「呂布はたけり狂った虎の様に勇猛な男であった。だが、きわだった策謀に欠けたうえ、尻軽でずるがしこく、裏切ってばかりいた。ただ目先の利益だけを追ったのである。古来、こんな風に振舞って破滅しなかったためしはない」

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実録!曹操の呂布退治